「冒険家・旅人・写真家 石川直樹」

 

石川直樹さんという人のことを始めて知ったのは

何年か前のJ-Waveでの対談番組でした。

人の名前は一回聞いてもなかなか覚えられないのですが

なぜかこの「石川直樹」という響きは

すんなりと、頭の中に刻み込まれました。

 

1977年生まれとは思えない、その落ち着いた話しぶりは

淡々としているというか、飄々としているというか

この人は一体どんな人なのだろうかと

とても人間的な興味をそそられる人でした。

 

その後(しかも偶然にも)同じJ-Waveで何回か

彼の声を聞き、話を聞き、私が彼に対して感じたことは

旅人であり、感じる人であり、伝える人であるということ。

 

彼が旅に魅みせられて

「何処かで何かを見たい・体験したい」と思った

その初めの旅は「青春18切符」でした。

乗り放題の安い切符で最初は日本を野宿で回ってました。

「そろそろ世界にも行きたいな」と思っていたら

高校の世界史の先生がインド好きで、それで興味を持ち

1ヶ月ちょっとアルバイトして、インドとネパールへ。
 

「生きることも死ぬことも、

ごっちゃにした混沌とした国を見て、

勉強とかにも興味持てなくなったし、少し違う方向に

いっちゃったのかもしれませんけどね」と語っています。

「色々な価値観があって、色んな人がいて、色んな考え方も

言葉もある。本当に世界は多様なんだってことを

体感しちゃったんですよね。」


 

番組の中で、その後彼がミクロネシアのお爺さんに

弟子入りをしたというのでますます興味津々となりました。

スターナビゲーションという、ミクロネシアの

ある小さな島にしか伝わっていないもので、

自分が今いる位置や、行くべき方向を、

海図とかコンパスとか近代計器を一切使わないで、

風・星・太陽・波・鳥あらゆる自然現象を頼りに

導き出す技術を教えてもらいに行ったという話は

「サタワル語で星の名前を覚えさせられて」や

「カヌーが壊れたらナビゲーションどころじゃないから

カヌーも直せなきゃいけない」と言われて

私たちの想像を遥かに超えた世界がまだまだあるんだと

いうことに驚かされます。

 

2000年に、北極から南極まで人力だけで縦断する

アドベンチャー・プロジェクト「Pole to Pole 2000」の

日本代表に選ばれて参加しました。また2001年には

エベレストに登頂し、世界7大陸最高峰登頂を当時の

最年少記録を更新しています。

 

石川さんにとって大切なことは、どこに行ったか、

何をしたかということではなく、その瞬間に

何を感じられたか、または、心を揺さぶる何かに

向かい合っていたかどうか、ということだそうです。

写真についても、「何を撮るのかではなく、なぜ撮るのかを

大事にしたいと思っています」と言っています。

 

「写真家・石川直樹」が世界各地を旅して目にした景色を

凝縮した一冊を最近本屋さんで見つけました。

そして帯には、

「旅に出よう。この本といっしょに」とあります。


 

 

最後に自分の話で恐縮です。

主人が生まれて始めて行った海外旅行はパタゴニアでした。

大学の卒業旅行での一人旅。

24枚撮りのフィルムは10枚ぐらいは残ったままで

「写真を撮りに行った訳ではないから」

彼もまたまだ見ぬ世界を「感じ」に行ったのでした。


 

文:沢田寛子

 

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