「東京公園散歩」「イギリス・ユートピア思想──ウイリアム・モリス」


「東京公園散歩」矢部智子



「イギリス・ユートピア思想──ウイリアム・モリス」大平真理子 他


確か経済評論家の内橋克人だったと思うが、本を2冊並行して読むと新しい発見があるといっていたように思う。

 クレマチスの丘にあるアート系の本屋で思わず買った本が、「東京公園散歩」だ。パラパラ繰ってみるとわかるが、東京にある見事な大公園のガイドブックなのだ。大公園巡りは心から愛する僕の趣味で、横浜や東京の里山や公園をまわって、その景観の美しさやバードウォッチングを楽しんでいる。



 この本は、おなじみの新宿御苑や昭和記念公園、砧公園など広大で樹木の生育の見事さにほれぼれする公園をいくつも紹介しているわけだが、ごろりと寝転がることが大切と僕と同じ視点であるところが嬉しい。なんでこんなに公園や樹木そして鳥に惹かれるのだろうと思っていたら、もう1冊の「イギリス・ユートピア思想」の中のウイリアム・モリスを読んではたと膝を叩いた。



 ちょうど幕末の坂本龍馬と同時代にイギリスでは社会変革のためにモリスが奮闘していたわけなのだ。産業革命驀進中で、貧困層が多く何やら現代の日本に通じそうな社会背景で、未来を見通すためにユートピア思想が必要であったようだ。そのユートピア思想は豊かな自然の観察力と健康な社会構想力からなっている。モリスは多忙な生活の中で、自ら自然に癒され様々な壁紙のデザインに取り組んだわけだが、川や動植物の生態系が人間の暮らしにどれだけ必要か、身近に迫ってくる宅地開発業者の緑地破壊を目の当たりにして、生涯戦い続けた。

 彼が求めたのは、良い自然環境の中で、喜びに満ちた人間的な労働の質の問題なのである。思わず何故公園の緑に惹かれるのか、了解できたのであった。




堀木一男

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