「本」である事の面白さ。



『100かいだてのいえ』
『ちか100かいだてのいえ』
いわいとしお
偕成社

絵本という世界も、次から次へと
新刊が発売される元気なジャンルではあるが、
本当の意味で子どもたちの人気を勝ち得、
何度も重版がかかる絵本は、実は少ない。

そんな中、発売から2年間で、
57刷も刷られに刷られまくった絵本が有る。

それがこの『100かいだてのいえ』という絵本だ。

この本は、まず、本を横にして前に置く。
表紙を上から下へ下ろすようにひらく。
読み手は、主人公と一緒に、縦に長い見開きを下から上に、
まるで100階建ての家を登って行くかのように、
読み進めてゆく。そして、10階分上がり切ると
ページを上から下へとめくる。

10階ごとに違う住人(生き物)が住み、
その住人ごとに特色のある部屋を、
その住人の生活を垣間みながら登ってゆく。と、
100階で待っていたのは・・・
そして、そこから見える景色は・・・

ページをめくるという行為が、
次の階は?次の階は?という子どもの好奇心を刺激し、
細やかに描かれたイラストが、想像力と遊び心を刺激して。
何度も何度もこの家を登って行く事を面白がる。

シリーズ2冊目の『ちか100かいだてのいえ』も同じように
本を横にして前に置き、
今度はページを下から上にめくって行く。
主人公の女の子と一緒に、見開きを上から下へと読み進め
地下深くへと降りて行く。

 
 

 
作者は少し前まで、メディアアーチストとして
デジタルの世界の最前線で活躍されていた岩井俊雄さん
ウゴウゴルーガやDSソフトのエレクトロプランクトン、
ヤマハのTENORI_ONなどを製作して来た
マルチクリエーターでもある。
僕が、かねてからリスペクトしている一人だ。
「最近ナニしてんのかな?」と思っていたら・・・
絵本作家なんかしてました。

出来上がってくる作品は、
突飛で可笑しい(変)物ばかりなのに、
中身は論理的で無駄がなく、全てに意味が有る。
発想が柔軟で、目的のために取る手段の引き出しが
尋常じゃなく幅広い。(結果、目的は最後までぶれない)
技術的には最先端なのに高尚な壁がなく、
スッと手が届くような柔らかい作品。
そんな作風にいつも感心してます。

テレビの番組でも特集されているものを見た事がある。
しゃべり方も物腰も柔らかいくせに、言ってる事が面白くて
なんだこのおじさんは?!と驚愕したものです。
この人の人間力にもリスペクトしてます。

あー。

話が尽きない。

えーと。つまり

電子書籍だ、タブレット型端末だ。スマートフォンだ。
技術や物に振り回される自分が情けない。
そういうことです。

面白さや好奇心は、技術や物ではなくて中身に在るのであって。
器が足りていればなにも、最新技術や最新機器でなくても十分。
むしろ、面白さや好奇心の本質を、ドウすれば伝えられるか。
アイデアと工夫。そこが大事なんだなー。

デザインも要は
その「本質」とか「核」とか「伝えたい事」を
いかに自然に、スッと贈れるか、深い所へ届けられるかが肝で、
それは道具やメディアが変わろうとも
やる事は変わらないお仕事、という事です。

この絵本は、
本てまだまだ色んな可能性があって
アイデアと工夫次第でどこまでも面白くなるという
お手本です。
本づくりのプロと言う立場にいると
意外と発想が凝り固まって、先が見えなくなってしまうものですね。
創造の限界をあっさり作ってしまいがちな思考に
もっと風を通さないと。。。
(会社の会議では全然出ないんだよねー)

脳が元気に、自由に創造できるように。
楽しく、面白く、創造する幸せをもう一度。

まとまった?てない?

文責:やまだ

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