エンジンの時代の終焉


 
新しい話題とは言えないが「ヤマハSR400」がついに生産終了となった。
SR400は発売以来30年もの間、大きなモデルチェンジ無しに生産され続けた
奇跡的超ロングセラーのバイクである。
発売当初から古き良き英国バイクを再現したようなコンセプトだったので、
それから30年、現在から見れば二重の意味で“ヴィンテージ”だといえる。

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私が20代の頃、30歳代になったら…つまり大人になったら、
きっとこのバイクに乗ろう…と憧れた。そして実際所有して乗っていた時期もある。
そのオートバイらしいクラシックで端正なスタイル。
今時キックスタートのみの始動は儀式とも言える程コツがいった。そして何より
エンジンの空冷フィンの形状と、そこから優美なカーヴで後方に伸びる
エキゾーストパイプの造形が素晴らしく、手放すとき
せめてこのエンジンと排気管だけでも手元に…と願ったが、叶わなかった。
 


そのバイクがとうとう生産中止となったのは、生き残りのため
度々対応してきた排ガス対策が、とうとう間に合わなくなったからと聞いている。
温暖化のさまざまな影響を身近に感じることが多くなり、ガソリンの高騰、
エコ意識の高まり、若者の嗜好の変化、そして世界同時不況の影響から
車離れが激しい…こうした状況を背景に、私たちの車社会は、
ハイブリッド車を皮切りに確実に「電気自動車」の方向にシフトしつつある。
私にとってSR400の生産終了は、このガソリンエンジン(内燃機関)の終焉を
最も実感を伴って認識せざるを得ない出来事だった。
 これを境に歴史あるエンジン(内燃機関)の時代を諦め、
「電気自動車」へのシフトを認めようと思う。
私がSR400の形や、走りのフィーリングに魅せられた様な感覚的なこだわり
(それはエンジンの時代が長い時間をかけて熟成させてきた感覚であり文化でもある)
は、しばらく意味を失うだろう。今は「移行」そのものに意味があるからである。
しかし人類から「車」そのものを無くすわけに行かない以上、目指す目標が
「電気自動車」なのか「水銀電池車」なのかわからないが、
つねに改良は加えられ続け、必ず熟成の時期がやってくるだろう。
その時、形や、走りのフィーリングに魅せられる新しい車や、
それに魅せられる人たちがまた現れるのかもしれない。
 
 
ヤマハSR400へのオマージュ 岡野祐三

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