「ユーモア」って大切な気がしています
東京・新宿にあるデザイン会社、㈱デザインコンビビア代表の飛鳥井羊右です。何かを伝える時、そこに「ユーモア(人を和ませるような《おかしみ》のこと。人を傷つけず上品さを伴う。)」が有るかどうかは、結構重要だと思っています。情報は「誰に」向けて「何を」伝えるかで中身が変わってきますが、「どうやって」伝えるかでは表現やメディアなどが変わってきます。最近久々に自宅本棚から「広告批評」を引っ張り出して眺めていて、ふと「広告」にはそういった要素が詰まっているなと感じた話。
僕はTVCMが昔から好きでした。
面白いアイデアで受け手を驚かせ、企業・商品・サービスへと興味を持ってもらうこと。
広告ってなんて面白いのだろうとデザイナーになってからすぐに思いました。
ちょっと前ですが、昨年流れていたサイボウズさんの表計算ソフト「キントーン」のCMは、
あれもこれも管理が全部1つのサービスでできるということを先輩が後輩に教えてあげるシーンから
後輩が涙を流して感動するというもの。(こちら弊社全く関係していません。あくまで気になったCMです)
B to Bサービスですが、この手の表計算ソフトを用いて事務仕事をしていた人にとっては
「あるある」なのかもしれません。大袈裟かもしれませんが、今まで苦労していた人には響くだろうなと
しかもちょっとユーモラス。
なんだか気になる、良い雰囲気があるんですよね。
で、実際のサービス紹介のwebサイトへと見に行ってしまうという。
そうして考えていると、以下のポイントがありそうな気がします。
・ユーモアを含んだ表現でボジティブに共感を生む
・内容に合ったビジュアルやコピーを作り心を動かす
・そして分かりやすく正しく伝える
何においても、同じようなことが活用できる気がしています。
中でも「ユーモア」って結構大事だなと思っています。
ドキュメンタリー映画の監督マイケル・ムーア氏が
「シリアスな内容であるほど、ユーモアを交えて伝えようとしないと誰も興味は持たないし、見てももらえない。シリアスなものほど、ユーモアが必要だ…」
という感じのことを、ボウリングフォーコロンバインという映画を作った時に
インタビューで答えていたと記憶しています。
ドキュメンタリー映画でも、問題提起を含むような難しくシリアスなものほど、
きっかけとしての「ユーモア」が必要なのでしょう。
今回、話の導入がTVCMの話なので、
「TVで広告打ってないウチには関係ないじゃん」と
思う方も多いかと思います。
しかし!
では、皆さんのお仕事では、
外に向けて情報発信を全くしないのでしょうか。
そんなことはありませんよね。
お店だったらチラシやパンフレット、
WebサイトからSNSと情報発信は行うはずです。
製品のメーカーだって商品の特徴や
スペックなどの情報は出すでしょう。
そのほかのサービス業だって情報発信はすると思います。
でも、その情報の出し方に工夫があると
効果的な情報発信ができるのではないかなと僕は思っています。
商品やサービスを選び購入(導入や利用)するのは「人間」です。
人間が判断をするわけですから、まずは「知らない」「無関心」な状態から
「知っている」「興味が有る」方へとシフトさせなければなりません。
人の心に響くことを真剣に考えて、そのきっかけ作りをしているのが広告だと思っています。
だから広告にはヒントがあると言えるのです。
皆さんも少し広告の仕組みに目を向けてみるのはどうでしょうか。
受け手のために、あれこれと工夫して発信をするということはどの業界も共通だと思います。
自分の会社の活動を顧みてみると、チラシやパンフレットを例に挙げても
ユーザーやクライアントへの説明が、単なる情報止まりになっているものがあるかもしれませんね。
しかもそれが、受け手が全く見たくない、読みたくない状態になっていたら…
頑張って情報発信していても、ほとんど届かないし心動かさないものとなっている可能性はありそうです。
特に仕事で受け取る・集める情報は趣味の領域と違い、好きで集めている情報ではありません。
趣味のように好きであればどんな情報発信だろうと、読みづらいチラシやパンフレットだろうと
頑張って読んだり収集したりしますが、こと仕事関係だと
見たくないと感じてしまったら即ゴミ箱行き。
ビジュアル制作はグラフィックデザインの技術領域
分かりやすく正しく伝えることはエディトリアルデザインの技術領域だと考えています。
その両方とも僕たちはデザイナーとしてお手伝いをしています。
色々とCMをヒントに考え直す情報発信があるかもしれませんね。
ちなみに、冒頭で少し触れましたが
広告のことをを知りたくて趣味で、広告批評という雑誌を定期購読していました。
「広告批評」はユーモアあふれる新作の広告を月刊誌で取り上げ解説していた雑誌です。
日々移り変わるTVCMの世界を月刊誌で取り上げていましたので
当時は情報のスピードがゆっくりしていたように感じます。
30年続いた「広告批評」もインターネットの普及により
2009年に役目を終えたようで休刊してしまいました。
休刊するまでの7年ほど楽しく毎月読んでいました。
情報発信において、伝えるべき情報は最低限で良いと言われるかもしれませんが
それだけではあまり心に届かないのではないかと思っています。
TVCMのように大掛かりでは無いにしても、
ちょっとした工夫で情報の伝わり方は変わってくると思っています。
ほんの少しの「ユーモア」を含む内容を作ります。そこに「キャッチコピー」、「グラフィックデザイン」
そして「エディトリアルデザイン」という技術を用いて制作する。
(情報を正確に分かりやすく伝える「技術」と考えていただければ間違いないかと思います)
それを意識できたら、情報発信が少しずつ良くなっていくのではないかと思います。
ユーモアがあるから僕は受け手としてCMが好きなんだろうなと今回改めて感じました。
こうした考え方が何かの参考になれば嬉しいなと思います。