『ことばの波止場』vol.12

大学共同利用機関法人 人間文化研究機構

国立国語研究所『ことばの波止場』vol.12

■研究機関の冊子制作

『ことばの波止場』が12号からリニューアルするにあたって、

企画内容から再構築するような大きな改変を行うこととなりました。

広報より声をかけていただき、

知っている伝手を頼って編集デザインの制作体制を整え、

リニューアルのお手伝いをさせていただきました。

12号から発行までの段取りが大幅に変わるとのことでした。

印刷物は、年度末に年一冊の発行となり

制作する記事はまず、

前期9月、後期4月の、年2回WEBで配信するという仕様になりました。

WEB先行で記事を作って、

あとでまとめて冊子にするというスタイルは

もはや、よくあるスタンダードな広報活動となった感があり

データで収めて終わるお仕事も増えました。

今回のご依頼は、紙の冊子まで行きます。

■準備(体制)

まずは、制作チームを作らなくてはなりません。

科学系の機関誌を数多く作ってきた編集者に声をかけ、

お付き合いのあるカメラマンにも手伝ってもらい

印刷所は今まで多くの研究機関の冊子を手がけているところに依頼することにしました。

編集者の方とはお付き合いが長く、科学系専門に制作されてきたので

「国語」の研究という、超文化系の研究所は「畑違い」すぎて

断られてしまわないかと心配していたところ

実は大学は国文を専攻していたとのこと。畑生まれでした。

カメラマンの方は、実は編集者の方といくつもお仕事をされており

その写真は何度も扱わせていただいておりましたが、

今回、直接お仕事させていただくのは初めて。

印刷所の方は、あの機関紙の紙ですね。という形で

こういう時、話が早く助かります。

■会議

編集会議に参加させていただきました。

編集に参加していただける研究員の方々が

それぞれの分野からお集まりいただきました。

リニューアル第一弾ということで

改めて「国語研」を知っていただこうという

自己紹介的な特集が企画されました。

また、既刊でもあった外部の「こくご」な方にエッセイを依頼したり

研究員が関わった書籍を紹介などはちょっと仕様を変えて継続です。

新規の企画として、会議で盛り上がった

「他の研究者の研究室が見てみたい」というテーマが

連載記事のアイデアとして浮上。

なかなかワイワイといい感じな編集会議で

「国語研」の柔らかな部分、面白い部分を感じられ

これはデザインににじませたいなと、思ったものです。

■制作

リニューアルするにあたって、

広報、編集部員、編集者、デザイナー、共通認識として

前提となるコンセプトが、

「ビジュアル」な冊子を目指すことでした。

とはいえ、「こくご」の研究機関なので文字、文章がメイン。

基本フォーマットを制作し、文字数を出して編集者に伝えます。

全部が文章で埋まるとさすがに大変。

3分の1以上ビジュアルに使えないと、

ビジュアルな誌面とは言えなくなると思います。

編集会議にて特集や連載の企画がまとまると、

ネット上のデータ置き場に原稿が集まってきました。

え?

という量です。

特集1って確か、8ページ(内最初の見開きは写真ドーン)だったはず。

これは、収まるのだろうか。

こういた大元の素材を拝見するのは初めてで、色々驚きました。

しばらくして、編集部から素材をまとめたデータがアップされ

展開してみると、編集会議で上がっていた紙面のイメージに近い形になるだろうと

想定した量にまとめられていて、驚きました。

これは、がんばって応えなくては。ということで、

読みやすく、文字量があまり気にならない感じになるよう

レイアウトしたつもりです。

特集は、大きな記事ではなく、

小さな記事を並べる展開で一つ一つ読み切るかたちです。

ひたすら文章を読み続けるという時間が短く切れているので

おそらく読者的にも、思いのほか文章量を感じないのではないかと思いました。

編集的な工夫でしょうか。

特集に続いてエッセイやインタビューがありますが

そこはしっかり「読む」ページになります。

ここは空間たっぷりでシンプルに組み、字数もおさえてあります。

特集と違ってサッと読んで、次のページへ行けるので

テンポよく読み進めている感じになり

冊子になった時、気持ち良いリズム感になるのではと思いました。

■取材

インタビューには編集者とカメラマンに加え、

山田も取材に参加させていただきました。

国語研は立川にあるので、他の研究機関よりはずっと近所です。

2時間を超えるインタビューでしたが、

ページとして割り当てられているのは1ページ(の3分の2)なので

これまた、大丈夫なのかと思っておりましたが

きっちりと編集されております。

あまりに自然な文章で、読者は気がつけないと思いますが、

あれ(2時間を超える言葉量)が、

こう(1ページに)なるのかと、驚きました。

また、カメラマンの方に撮影していただいたお写真も

今まで国語研の広報などで使われてきた

どの写真よりも表情が豊かで、人間味がある良い写真です。

ありがちなバストアップの写真ではなく、

インタビューをさせていただいた

場所の雰囲気も写した写真を選ぶことができました。

■表紙

表紙のデザインはひと目で「リニューアルしました」というデザインになりました。

変えるにあたり、この、どこまで変わるのか、どう変えるのか加減が大変難しく、

広報の石川様へ何度もトライさせていただくことになり、申し訳なくも

変な着陸地点に降りず、しっかり新しい表紙を選んでいただき

大変助かりました。

■完成

「冊子になるのは1年後」という長期な案件になりましたが

やはり手に取ってパラパラめくれる感触というのは別格です。

「ビジュアル」な冊子に。というテーマのもと

特集1の見開き一発目にドーンと写真があるのは、気持ち良い。

モニターで見るとは違う開放感があります。

特集2の道具を「バッと広げた」見開きとか、縦にスクロールして見せる

内容とは、また違った情報(印象)として伝わるものがあると思います。

なにかと紙媒体が消えていく流れですが。

ここぞというアプローチの際には、物理的なモノとしての印刷物も

選択肢として「アリ」なのではないでしょうか。

お仕事録としてブログをまとめて思ったことは、

久しぶりに「冊子」というものを制作して

改めて「感触(アナログ)」の良さを感じたデザイナーのお話でした。

文責:山田

デザインコンビビア

お問い合わせはこちら

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です