存在の大いなる入れ子


 

トランスパーソナル心理学の中心的理論家ケン・ウィルバーは、人間の霊性(スピリチュアリティー)を考えるうえで、3つの眼の考え方を提唱しています。3つの眼とは肉の眼(自然科学的な眼)、理知の眼(客観的眼より心的現実が重要な心理学的な眼)、黙想の眼(霊の眼であり、精神が精神を直接体験することによる知)であり、この3つ眼が誤って扱われることをカテゴリーエラーといいました。3つの眼の内一つだけが突出し、他の眼の存在を否定し、すべてに適用してしまうことだといいます。またどの眼においても方法の指示、理解、共同検証という3段階のプロセスを踏むことにより客観性が保証されねばなりません。とりわけ瞑想の眼によって得られた経験や知識も、検証や吟味が必要だというのです。

 その彼が膨大な学問的知識を総合し、宇宙の進化の構造を結論的に提出しました。それが、存在の大いなる入れ子構造の図です。

 はじめは物質だけだった宇宙に、物質(A)を基礎としてし生命(B)が誕生し、生命(B)の中に心(C)をもつものが生まれ、心(C)の中から魂(D)が生まれ

、魂(D)の中から、霊(E)が創発するというのです。これは、前の段階のものを基礎として、それを保持しながらステップアップしていきます。単純なものからより複雑で高次なものへ積み重なり進化してきたのです。この関係でウィルバーは低次のものをより基礎的、より高次なものを優位であると表現しました。基礎的なものがなければ高次のものも存在できませんから、ともに重要ですが高次なものは低次なものを内部に含んでいるのでより優位で深度が深いのです。もしこのモデルが正しければ、霊的存在としての人間は進化の中で最も優位な存在ということになります。すべての基礎的なものを内包した霊だからです。

 視点を全体に移してみましょう。魂(D)は霊(E)の部分であり、心(C)は魂(D)の部分であり、生命(B)は心(C)の部分であり、物質(A)は生命(B)の部分を構成しています。どれも下位のものに対しては全体であり、上位のものに対しては部分なのです。このような全体であり、同時に部分であるという性質をもつものをホロンと呼びます。宇宙の構造は、大きな箱の中に小さな箱が入っており、その中にさらに小さな箱が入っているというような、入れ子構造になっているのです。さらに円の外側の大文字のSPIRITに注目です。このSPIRIT(霊)は図で言うと全体として神そのものであり、入れ子構造のすべてを生み出しすべてを内に含んでいる基盤です。霊はすべての根源でありすべてを包み込んでいるというわけです。これって世界の諸宗教の指し示す世界観そのものではないでしょうか。

 

堀木

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です