小さい出版


 「本づくりのかたち」

 
編・著 芳賀八恵/発行所 8plus
個人で、あるいは極少人数で本を制作し、発行する小さな出版社(者)を取材しまとめた本。この本も芳賀八恵さんが主催する8plusより刊行。100頁ちょっとの新書版(カラー写真あり)で1800円は、総部数の少なさを感じさせる。
 
内容は、本を作っている出版者を訪ね、本を作り始めるに至った動機や、本づくりへの想いを綴った内容になっている。
そうした出版者によって出版された本は、大手の本と比べても遜色はないし、むしろ「作り、出す」に至る熱みたいなものが、本そのものに残っているような感じがします。
プロダクト的なアプローチや、同人的なマニアックさも許容する「本」という形態の可能性を、色々表現しているので。個人的に興味、関心がとても高いです。
ヨーロッパでは一冊一冊、ハンドメイドで本を作るスタイルもあります。クラフトの一環として捉えても差し支えが無いのかもしれないです。某デザインフェスタというイベントに、エディトリアルデザインを掲げて参加するサークルが一つも無く。エディトリアルはデザインじゃないのか?とガッカリしていましたが、もしかしたらこのアプローチでエディトリアルだってデザインだい!と、参加できるかもしれないと思いました。
 


「ZERRO ゼロ」
 
著 松田行正/発行所 牛若丸
「本づくりのかたち」の最初に紹介されている出版者、松田行正の主催する牛若丸は個人発信の出版者としては有名(メジャー)です。デザイナーである松田氏の趣味?がまとめられ、自分で手がける装丁は、こりに凝って好き放題。自分の本だし。みたいな遊び方がとても良いです。

 
楽しく明るい玩具としての本
やさしい本
おもわずプレゼントしたくなる本
夢を持ち続けている大人の本
オブジェとしての本
そして、奇妙で月っぽい本
牛若丸では、そんな本を作り続けてゆきたいと思います。
 
というコンセプトだそうです。
自著以外の本も有ります。作りたい本がはっきりしていて、ぶれが少ない印象です。
ふと、読んでみる。お茶のひと時だけ、パラパラめくってみる。適当に開いて眺めてみる。そういう気楽な、それでいてちょっとした知的好奇心をくすぐるようなラインナップで、リビングに何気なく置いてあると良い感じにインテリアにもなりそうな本です。


デザインの道具箱「眼の冒険」
 
著 松田行正/発行所 紀伊国屋書店
牛若丸の松田氏が、牛若丸以外で出した本です。(二冊目だとか)
雑誌「デザインの現場」で連載されていた記事を、加筆修正を加えてまとめた本です。
これも凝り凝りの装丁で、もちろんご自身が装丁をされています。
視覚、眼が見ている物、脳が認識する形、、、等をあらんかぎり列挙して検証して行く、松田スタイル(?)の著書で、これも、何となく眺める系。ペラッと開いた頁から読んでもいいような内容で、面白いです。
沢山点を集めていくと、線になり、やがて何だか意味のある模様に見えてくるという感じが、共感できます。松田氏なりの模様の見方も読めるのですが、単純に読者が感じた模様として読んでも良いと思います。

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