新聞に読者は戻ってくるのか

ここにとりあげたのは、共に新聞の折り込みとして目にとまったもの。

右は「GLOBE」。朝日新聞が10月に創刊した別刷りで、隔週の月曜日に発行されている。
年内は4ページだが2009年から8ページに拡大するそうである。
その名の通り内容は、世界的・地球規模といった大きな枠でのとらえ方で、環境・経済などを掘り下げる。
紙面から、時代に置き去りにされない視野の広い
ジャーナリズムをめざしている心意気は確かに伝わってくる。

左は「ここち」。毎日新聞の2007年6月に創刊したタブロイド判月刊紙。
こちらの内容は先例とは一転して女性読者目線だ。『自分の半径1メートルから始める
「ここち」よい暮らし』と前書きにあった。手作り感のある、背伸びでない豊かさを目指そう…
との提案なのだろう。

こうした新聞紙面の試みは、言われて久しい「活字離れ」への抵抗として、
ほかの新聞社でも試行錯誤しているのだろうと予想する。
企画はもちろん、表現にも力を注ぎ、「GLOBE」はADに木村裕治氏を起用して、
朝日新聞としても力が入っているのが分かる。
「ここち」は24ページもあって、写真・イラストなど贅沢に使って、
ほとんど雑誌のような体裁だ。両方ともデザインという観点でも申し分ない。
ここまでして、では「新聞に読者は戻ってくるのか」ということを考えると、
はなはだ心許ない感じを持つのは、私だけではないだろう。
私がこの2つを取り上げたのは、そちらへの意味からだった。
Webと携帯電話がここまで普及した中で、「新聞くらい読めよ」「少しは本を読めよ」
と言ってはばからない私たち世代でさえ、新聞に中身に目を通すのは週末くらい、
ウイークディは目次だけ読んで慌てて出社し、帰宅してからはテレビで…
といったライフスタイルになってしまっている実情がある。
日経新聞のように仕事に直結したものを除いては
電車内で新聞を読む姿は、そういえば最近めっきり見なくなった。

そうした社会状況下でも、企画が良ければ、読者の求めているニーズに的確に答えていけば
「新聞に読者は戻ってくる」のか。
さらにグラフィックデザインの末端に関わる者として、デザインの力でどれだけ
「新聞に読者が戻ってくる」のか…
以前取り上げた「カラマーゾフの兄弟」の文庫本のようなことが起こるのか…
正直、諦めというか無力感が支配的ながら
こうした試みをしばらく注視していたいと思っている。

岡野祐三

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