「平和を実現する力」
2009年9月10日
2020年11月19日
「平和を実現する力」
長女の死をめぐる被爆牧師一家の証言
四竃 揚 編
2009年夏 平和を考える時期に間に合わせるべく計画出版された本である。
編者とその家族6名中4人は、広島に投下された原爆の下にいた。
爆心地からもっとも近かった長女のみが、結果としておよそ一月後に
亡くなる。その間の家族の動向が、6人の証言として語られているものだ。
原爆文学として、井伏鱒二の「黒い雨」が知られており、
最近では高野史代描くところの漫画「夕凪の街 桜の国」も出色の作品だと思う。
このドキュメントは、まさしくそれらに加えられる1冊になると思う。
特に家族崩壊が言われるこの時代に、家族の絆が胸に迫ってくる。
わたしは、この四竃 揚牧師にキリスト教のいろはを学んだ者だが
壮年時代の四竃牧師からは、そのような物語は聞いた記憶がない。
78歳になる四竃牧師が語り出したのは、3-4年前からであろう。それだけ
この証言を語るに月日を要したことになる。これは、広島の被爆体験者
皆に言えることのようだ。その人達にとっては、昨日のことであり
胸張り裂ける思いなのだ。心に秘め続けた痛み、それがはじめて
理解出来た気がした。すべての方々にお勧めした1冊である。
装幀はわたしがさせていただいた。
堀木一男