39回刷って一枚。
THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦
2024年11月16日(土曜日)~2025年1月19日(日曜日)
一般 620円
うらわ美術館にて(JR浦和駅 西口より徒歩7分)
しばらく休館だったうらわ美術館が再開。
リニューアル一発目が「版元・渡邊庄三郎の挑戦」という。
誰?な人をフィーチャー。
実際ポスターも、見たことない浮世絵。
しかし「新版画」と「版元」というワードで
もしかすると「川瀬巴水」「伊東深水」あたりの
浮世絵があるんじゃないかと思っていたら、
なかなかな点数が展示してありました。
また、勉強になったといったら失礼かもですが、
初めて知る役者絵の「名取春仙」、花鳥画の「小原祥邨」など、
有名な巴水、深水に負けず劣らずの作品に驚いたり。
伊東深水の版画「髪」が刷り上がるまでの、
39もの版木を刷り重ねていく工程を動画にしてあったり、
普通、見ることなどない川瀬巴水の
貴重な肉筆原画と、その浮世絵が展示されていたり
川瀬巴水が自身の原画が版木に掘られる工程を解説する
これまた貴重な映像などもあったりと、期待以上の内容。
浮世絵という表現の面白さがよくわかる展覧会でした。
しかし、今回の展覧会のキモは、
渡邊庄三郎と縁のある海外の作家による
見るのも聞くのも初めてな浮世絵。
これがまた、とても良かった。
あまり、海外の作家が活躍していたなんて、知られていないだろうから
この展覧会でしか見られない作品かもしれない。
あちこちの美術館が所蔵している巴水や深水より貴重な作品。
(このレトロなスタイルで波乗りする作品、めちゃくちゃ良い。)
表現として木版画ってかなりすごい。やりたくなる。
昔、春画展を見て、贅の限りを尽くした浮世絵を見たことありましたが
高価で高級で金と時間をかけてやったぞこれでもか的な、浮世絵と違って
実直な職人の超絶技巧がクールで素晴らしい。
それから北斎や広重のような、型の綺麗な浮世絵と違って
写真や映像が隣にある時代の「浮世絵」の、構図や、情感の込め方
景色の切り取り方など、浮世絵なのにどこかモダンで新しい。
刷り色を変えて時間の変化を定点カメラのように見せたり。
版木を差し替えて四季の景色を表現したり。
明らかに映像インスパイアな作品もユニーク。
よく見ると1ミリ程の星が星型だったりしてかわいい。
巴水は自身を浮世絵に登場させるような
ヒッチコック的な遊びもしていたり、発見や面白さがあって飽きない。
そもそも1点1点がその他の「版画(銅版画、孔版画、石版画)」などと
一線を画す芸術的な強度を感じられて素晴らしい。
かさばるので買わないようにと思っていたのに
面白い展覧会だったので、つい図録を買ってしまった。
判型も装丁もかっこいい。
まだ始まったばかり、また見に行っても良い。
巴水好きな友人にも教えよう。
文責・写真:やまだ