いわいとしお×東京都写真美術館

光と動きの100かいだてのいえ
ー19世紀の映像装置とメディアアートをつなぐ
240730〜1103
東京都写真美術館 地下1階展示室

わたし。いわいとしおのファンです。
それはもう古くからのファンで、氏が制作に関わったモノを追っかけております。
ウゴウゴルーガ
エレクトロプランクトン
YAMAHA TENORI-ON
100かいだてのいえシリーズ
デジタルとアナログをいい塩梅でリンクさせる(山田の知りえる狭い範囲ですが)唯一のクリエイターです。

(以前のブログです)
「本」である事の面白さ。
https://convivia.co.jp/blog/staffblog/2011/01/21/100-story-of-house/

今回の展覧会。
光と動きの発見からさまざまな発明を、いわいとしおの「100かいだてのいえ」のように分かりやすく階層化して展開しつつ、自身の「メディアアート」に至る創作の歴史をたどり、そして今、いわいとしおの現在地を紹介する展覧会です。

立体版100階建て(に見える)の家

スリットの向こうを通り過ぎる馬車の車輪のスポークが歪んで見えるという発見。
重なる円盤の回転を通した光の動きが、形を作るという発見。
高速回転によって、裏表の絵が一つの絵に見えるおもちゃの発明。
鏡に映した回転する円盤に描かれた絵が、スリットから見ると動き出す道具の発明。
光を通して絵を見ることができる発見。
動いているものを連続で撮影する発明。
連続で撮影したものを光を通してみる発明。などなどなど
歴史上のさまざまな発見が閃きを生み「アニメーション」と「映像」に進化していく工程が全て、レプリカを触りながら体験できるようになっています。
(さわれないけど当時の本物の現物も展示)

小さなお子さんを連れた親子が多く、展示品もかなり低い位置に展示され、全て触れて、動かせるようになっていて、幼稚園クラスの小さな子供たちがすごい勢いでグルグルグルグルとやってます。

いやいや、きみたち。
はっきり言って、これ。とんでもなく凄い展覧会よ。
一つ一つの発見が世界を前進させてきた発明につながるような、そんな装置がほとんど触れる形で集められていて、順番に体験しながら確認していけるなんて。
夢中になってグルグルする幼稚園クラスのお子さんでもいいけど、もう少し「面白い」「楽しい」の中に、発見や気づきができる小学生の高学年、中学生くらいにも是非見てもらいたい(まー、いちばん博物館とか美術館に興味を示さない年頃かー)。
説明もいらない。言葉なんか関係ないので、外国人の子供でもいい。
興味と関心、驚きと好奇心、行為と結果の面白さと楽しさ。ひとつひとつ小躍りするほどの興奮!
すごいぞこれは!(と、内心大騒ぎながらも大人らしく何食わぬ顔で、会場を3周ほどしている自分)

そういえば、連れてきた子供より親の方が熱心にグルグル動かしている気がする。

いわいとしおの創作の原点のような「工作ノート」
小学四年生の時、母親から、「おもちゃはもう買いません。欲しかったら自分で作りなさい」という衝撃的な宣言をされたことから、父に協力してもらいながらも、本当に自分で作って遊ぶことを始めてしまう、としお少年。どの家庭でもありがちなエピソードに思わず笑ってしまったが、そこから爆発する才能というか、センスというか。結局、作ることが好きだということではあったのかもしれないが、結果天才「いわいとしお」が育っていくんだから、すごい。

工作遊びからから、絵が動き出す「パラパラまんが」に興味が広がり、古川タクが紹介した「驚き盤(フェナキスティスコープ)」に衝撃を受け、大学時代にはデジタルとの親和性に気がつき「メディアアート」というジャンルに属する幾つもの作品を発表。のちのウゴウゴルーガや、エレクトロプランクトンへと進化、YAMAHAから発売されるTENORI-ONなどへ発展していく。このままデジタル系のアーチストになるのかと思いきや。
今、絵本作家という経歴も痛快ですごい。

絵本の原画

展覧会の最後のコーナーはいわいとしおの現在地「イワイラボ」
コーナーの説明に「車輪の再発見」という言葉が紹介されていた。
近年のIT業界では、すでにある技術と知らずに、または知りつつ、再度作る行為を無駄なものとして軽蔑的に表現する言い回しだそうだが、いわいとしおは考える。
ほんとにそうなのか?と。
今回の展覧会で紹介された、さまざまな歴史上の発見と発明を再現し再検証する場として今、取り組んでいるという。

踊り出す!

それこそCGの黎明期から「見たことない映像」を次々と見てきた山田。
最近はあまりにリアルになりすぎたCGに逆にシラけているくらいな自分。
ところが。
今回の展覧会で、目の前で「絵が動き出す」面白さや楽しさ、興味・興奮、関心は、なんなのか。
映像、アニメーションの根源的な面白さであり、本質じゃない?

「ラボ」からどんな作品が生まれるのか、また期待し、注目しております。

なんだか、いろんなヒントがある展覧会でした。
もう一度見に行きたいし、これはぜひ写真部で映像をやってるもう高校生な甥っ子にも見てもらいたい。
ぐるっと見れば1時間もかからない小さな展覧会ですが、本当にすごい内容です。

文責・写真:やまだ

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