ぼおるぺん古事記
2012年8月28日
2021年7月12日
日本最古の神話「古事記」をボールペンで絵物語にした
この『ぼおるぺん古事記』。
作者は漫画家のこうの史代さん。ブックデザインは、
祖父江慎さんが代表をつとめる会社「cozfish」の
佐藤亜沙美さんです。
お気に入りの理由は、内容が面白いことは勿論なのですが、
それを引き立てるブックデザインが楽しい!
まず目に飛び込むのは、本の高さの4分の3程もある太い帯。
「古事記なんて古い書物、難しそうだな~」なんて心配は、
この帯の賑やかな文字組とイラストが吹き飛ばしてくれます。
カバーに使われている手触りの良い紙も、
親しみやすい雰囲気を作っています。
そうして本を開いてみると、冒頭にこうのさんの言葉、
それからボールペンでびっしりと書かれた古事記の原文…
目が眩みそうな密度です。
こうのさんの真剣さがひしひしと感じられます。
この部分のみ綴じ方を変えているという凝り方も、
読者のこころをくすぐりますよね。
本編である漫画の部分は、
下部の注釈で言葉の意味を確認しながら読み進めていきます。
漫画としては厚い本ではないのですが、
注釈を確認しつつ読んでいると、結構な読み応えがあります。
それでも一気に読めてしまったのは、古事記本来の面白さに加え、
古事記の世界を読み解き、漫画におこしたこうのさんと、
その漫画の魅力を的確に捉えて本のカタチにした佐藤さん、
おふたりの表現力があってこそだと感じました。
ちなみに以下は本の冒頭に書かれている、こうのさんの言葉です。
「玉のついた矛が
国生みを助けたように
玉のついたペンが
この作品を
導いてくれるはずだ」
ボールペンと古事記という異質な組み合わせが、
漫画を読んでからこの一文に戻ると
「なるほど!」と納得できてしまいます。
文:田島