「チェーザレ」

マキュアベリで名高い「君主論」を体現した中世ヨオロッパの政治的天才がチェーザレ・ボルジアだ。惣領冬美えがくところの「チェーザレ」はモーニングKCに連載されたものが、単行本になったものである。監修者をたて、資料を駆使して学問的な正確さに努めている。おかげで、かなりレベルの高い読者をも引きつける力をもっている。装幀は活字のタイポグラフィーを彷彿とさせるオーソドックスな中心組だ。風合いのある生成の紙に印圧をかけたスミの一色刷にみえる。実際はスミの2色刷だろうか? 超シンプルである。その代わり広めのオビは4Cのイラストレーションで口絵ふうである。渋さが引き立って魅力的だ。表紙や扉に使われている欧文書体はフェルマン・ディドーでボドニにならぶモダンローマンの傑作だ。美しい文字である。しかし、時代にフィットさせるなら残念ながらこの文字はミスキャストといえるかもしれない。舞台がイタリアだけにヴェネチアン系の書体で決められたら素晴らしかったかもね。歴史物が好きな人にお勧めしたい。ちなみに僕は、チェーザレ・ボルジアをしったのは、宝塚の舞台である。エゴイスチックな悪の魅力のにおいがする。


堀木一男

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