ニライカナイ
2012年12月12日
2021年7月12日
なんとなく、見ては罰当たりな気がするけれど、
何があるのか気になって仕方ない。
そこで、お賽銭を入れて(許されたような気になって)
木の格子の隙間から、真っ暗闇を覗いてみる……
藤井保さんの写真集「ニライカナイ」を見ていると、
その時の気持ちがよみがえります。
日本の海に浮かぶ島々の風景を切り取った写真集。
目をこらすと暗闇に浮き上がってくる景色は、
静かで、厳かで、少し怖い。
テレビのように、ただ目を向けていれば良いような
光でいっぱいの表現世界とは正反対で、
この写真集の世界は、こちらの「見たい」という
最初、明るい蛍光灯の下で本を開いた時は
その「見えない」ことに驚きました。
コントラストが弱くて暗く撮られた写真が多いのです。
でも、写真の黒に光が反射することの無い
薄明かりのなかで開くと、
この写真集はぐんと魅力的になります。
写真のうしろの青色も、
こんな主張の強い色を合わせるとは!と驚きましたが、
人を寄せつけない深海のような色は、
見たいと思って目をこらす。
そうして見えてくる風景には、
その時の自分の心の有り様までもが
写り込んでいるように感じられるのです。
昼も夜も明るいことに慣れた目を
文:田島