“アンジュール”

 僕が今回、おすすめさせて頂く本は
“アンジュール”という絵本です。

出版されたのがだいぶ前で
割と有名な絵本なので
知っている方も多いかも知れません。

この本の大きな特徴として
本編では文字が1文字も使われておらず、
全てのページがスミ1色で刷られています。

書店の絵本コーナーを覗くと
カラフルな絵本に囲まれた中に1冊
あまり色を感じさせない表紙。
その中心に物悲しそうな犬。
なんだか少し異質な感じにさえ思えてきます。

しかし中を観てみると、これが凄く良いんです。
イラストも、いわゆる精密に描かれたイラストとは違い、
スピード感あふれるクロッキーデッサンのようなイラスト。

ストーリーは
主人公の犬が、その飼い主によって
捨てられてしまうところからはじまります。
飼い主の車を必死で追いかけますが
とうとう追いつく事が出来ず
途方に暮れ、野を、町を彷徨うというものです。

その中に文字は1文字も書かれていませんが
とても、その情景、気持ちなどが伝わってきます。
この本は、本編だけで53ページにもわたりますが
その中で、1度も人に向かって吠えていません。
捨てられてなお、最後まで人を信じ続けているのです。

飼い主は、どのように犬と接していたのでしょうか。
捨てなければならない、よほどの理由があったのでしょうか。
どのような気持ちで犬を窓から放ったのでしょうか。
放り出された犬はどんな気持ちだったのでしょうか。
人の気持ち、犬の気持ち。
文字がないので、なおさら色々と考えさせられます。

万国共通で、老若男女問わずお薦めできる1冊と思います。

文:大友

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