切なさ ひとつまみ

「KASAI Kaoru 1968」

「葛西薫さんのデザインが好き」という方、多いですね。
この作品集を近くにおいて
たびたび開いている私も、そのひとりです。
自然体で無理がなく
見るとゆっくり心が満たされる。
たとえば「サントリーウーロン茶」のCMは
どれほど多くの日本人の心を
つかんでしまったことでしょう。
「虎屋」の和菓子の空箱を前にして
「捨てるのがもったいない〜」と頭を悩ませる人も
少なくないと思います。
なぜ葛西さんのデザインは
こんなにも人の心に残るのか。
この不思議な魅力を言葉にするとしたら
何だろう? と(勝手ながら)考えてみると
“切なさ”というキーワードに行き着きました。
心の奥に仕舞ってあるやさしい記憶に
思いがけず触れたときの感覚。
内側からくすぐられるような切なさ。
もしかしたら、発信する葛西さんと
受け取る私たちが共有する「日本人の記憶」が
くすぐられているのかもしれません。
ユーモラスな作品にも隠し味のように
“切なさ”がとけ込んでいるように感じます。
とにかくすーっと引き込まれてしまうので、
気まぐれにパラパラと眺めるつもりが
いつの間にか何十分、というのがお決まりです。

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