やさしさの暴走

本や雑誌の仕事に携わって長くなるが、なかなか思い通りになるというということはない。この仕事は、まさに思いがけなく天から降ってきたような話しで、編集者は出版社の社長であり、執筆者は女性だけのマーケティング会社の会長であり、話を聞いている内に、かっての知人であることがわかったというようにまさにプレゼントのような仕事だった。本文の組みスタイルから写真の入れ方、装幀まで心ゆくまでやらせていただいた。

 「やさしさの暴走」という不思議なタイトルの本には、“社会を変え、人を幸せにする力”というサブタイトルが付いている。内容は文字通り社会を変え、人を幸せにするために奮闘している7人の方たちのインタビュウーで構成されている。著者の岡山さんとは実は面識がある。十数年まえ岡山さんが雑誌に取り上げられていて、それを読んだ私が思わずこの人と会って話してみたいと連絡をとったのだ。何度かお会いしてお話しを伺ったが、そのときも岡山さんは精神病の患者さんの社会参加のプログラムのために奔走していた記憶がある。

 その岡山さんの交友関係からのより抜きのメンバーのインタビュー記事なのだ。われわれの日常ではなかなかお目にかかれない、やさしさへのこだわりにおいては筋金入りの福祉関係の猛者なのである。このひとたちが「やさしさの暴走」の本体なのである。そして存在をかけて自らの居場所を構築してきた方々なのである。

 帯の惹句に「本物のやさしさにはブレーキがない。やさしさが暴走して本物が生まれる!」とある。7人の静かな熱い闘いに是非触れて見て欲しいと願っている。

  

堀木一男

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