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13CONVIVIA COLOR活版印刷からの遠近法岡野祐三仕事中いつも聞いているFMで紹介しているのを聞いて、すぐ探したのがこの写真集だ。『文字の母たち』…ラジオから聞こえてきた書名にもぐっと心を引かれた。新本が見あたらずAmazonで古本を購入。 書物の奥深い成り立ちを辿る時、著者(港 千尋)は今では遠くなってしまった「活字」「活版」に行き着き、魅了される。そしてその世界を丹念に写し残そうと試みた。著者は批評家であり写真家だ。 写真はフランス国立印刷所で、2006年に活版部門が大幅縮小される直前に撮影されている。この印刷所はグーテンベルグの印刷術発明とほとんど同じ500年近くの歴史を持ち、ガラモン書体のクロード・ガラモンも在籍していたところでもある。縮小といっても閉鎖に等しいいわば歴史の終焉…の直前とあっては、撮影の時間はまるで足りなかったに違いない。 半分近くはカラー写真だが、モノクロの方が濃密さ質感が「活字」のもつ鉛とインクのイメージとぴったり重なって印象的だ。特に「活版印刷」の世界の圧倒的な物(ブツ即ち金属)の量感に、私もかつて見た活版印刷の現場や空気を思い返し感動する。書物を生み出す過程が、もとは圧倒的に「物」のある風景であり、物理的に組み上げられた世界だったということを改めて思う。その様々な物に係わる、れぞれに専門分化した技術と、多くの人々の人生が存在した。濃密なの写真の向こうに、そうした深い歴史を感じ取ることができる。昨今の「電子本」の世界から感じる軽快なスマートさとは、真逆のイメージだ。 …などと思っていたら、同じ著者のもう1冊を見つけた。『書物の変──グーグルベルグの時代』。実は購入間もなくまだ読んでいないが、併せて紹介しておきたい。 書名からも想像できるように、書物の「電子本」化をとりあげている。物が支えていた情報(グーテンベルグ)から電子による情報(グーグル)への移行を見据えた内容だ。このもう1冊がなかったら、先の写真集は下手をするとただ記録やノスタルジーに見えてしまうかもしれない。 『文字の母たち』から「電子本」。この2点間を結ぶ著者の視線が書物への思いを中心に、人に何をもたらし何を失わせるのか…どう論評されているのか期待している。活版印刷の歴史を見届けた人が、現在の書物の状況を語るのだ。この遠近法的な見方に注目し、私も考えたい。印刷『1,2&3色 デザインコレクション 2』田島未久歩この本は、通っていた美術予備校の先生がオススメしていたものです。「色面構成の参考になるよ」と聞いて、色面構成が苦手だった私は、あわてて本のタイトルをエスキース帳に書き込んだ憶えがあります。 CMYKの4色印刷へのアンチテーゼとして企画されたこの本。1色から3色の、色数を絞った印刷物ばかりが載せられています。それも世界中から応募された中の、選りすぐりの作品というのが面白い! もともとローコストを目的とした1~3色印刷ですが、上手に使うと新鮮な感じをあたえられるということがこの作品集を見ているとよく分かります。私がこの本を開くのは専ら色の組み合わせに悩んだ時です。掲載されている作品を眺めて、自分の中になかった色の組み合わせを見つけて真似をしてみたり。 この色とこの色を合わせるなんて! しかもそれがカッコイイなんて!と、何度開いても驚いてしまいます。 様々な国の作品が載せられているので、日本ではあまり見ないような色の取り合わせを見つけられるのも、この本の魅力です。 また、この本の序文にも書かれていたことですが、色数を少なくすることは他の構成要素が際立つという効果もありそうです。誤摩化しがきかないというのは作り手にはプレッシャーですが、やりがいにつながる面白い特長でもあると思います。 制限を設けることで、その中でいかに魅力的なものを作れるかと試行錯誤する面白さ。準備万端で行くキャンプも良いけれど、少ない道具で「これを、こうしたら…」とあれこれやってみるのも楽しい、というのと似ているでしょうか。活版の魅力と、色数制限の可能性。

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