CONVIVIA COLOR_2
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7convivia colorここにとりあげたのは、共に新聞の折り込みとして目にとまったもの。 右は「GLOBE」。朝日新聞が2008年10月に創刊した別刷りで、隔週の月曜日に発行されている。 年内は4ページだが2009年から8ページに拡大するそうである。 その名の通り内容は、世界的・地球規模といった大きな枠でのとらえ方で、環境・経済などを掘り下げる。 紙面から、時代に置き去りにされない視野の広いジャーナリズムをめざしている心意気は確かに伝わってくる。 左は「ここち」。毎日新聞の2007年6月に創刊したタブロイド判月刊紙。 こちらの内容は先例とは一転して女性読者目線だ。『自分の半径1メートルから始める「ここち」よい暮らし』と前書きにあった。手作り感のある、背伸びでない豊かさを目指そう…との提案なのだろう。 こうした新聞紙面の試みは、言われて久しい「活字離れ」への抵抗として、ほかの新聞社でも試行錯誤しているのだろうと予想する。書店では文庫本が平積されて、例年のように夏休みキャンペーンが始まった。 そんな時期、娯楽色の強い読書傾向と思っていた息子が、漱石の「こころ」を始め古典に属する文庫本をまとめ買いしてきた。「書店では膨大な量の本を前に、何を選んだらよいのか途方に暮れるが、書店員の小さな推薦カードやジャケットデザインの目新しさが後押しになった」と言う。 私も「蟹工船」「こころ(ダブってる!)」などを、ジャケットに惹かれて買っていたっけ…そういえば今年は特に新ジャケットが目に付いた。 活字離れ・出版不況といわれて久しいが、こうした売る側の工夫で、時代を超えて価値を持っている本にスポットが当たり、また売れ出すことが実際にあるということである。 ここに写真で紹介した文庫本は数年前、まさに表紙の絵にひかれて買ったものだ。 この「ちいさな王子(星の王子さまの新訳)」だけでなく、このシリーズは全てこの人の一筆書きのような不思議な魅力の絵で装丁されており、「カラマーゾフの兄弟」をはじめとした古典作品ばかりであるが、今も平積みでおいている書店をよく見かける。それだけコンスタントな人気があるということなのだろう。 最近の新訳・新装といった傾向の、先駆的なシリーズだったのかもしれない。(2008年)新聞の全面広告に釘付けになった。 左コーナーで紹介した文庫シリーズの、ドストエフスキーが売れているこという内容である。 前に私が取り上げた時は、装画・装丁にフォーカスしていたわけだが、この広告では訳者の写真をメインに「新訳」の素晴らしさを前面に訴えている。 いずれにせよ、売れているからこそ打てる広告ではある。 ドストエフスキーが読まれている…そのバックグラウンドに、今の行き詰まった世相があるのは間違いない。 そんな中で読者層はどんな分布なのだろうか。 広告は少なからず若い層を意識しているようだが、実際はもっと広範囲なはずである。 団塊世代あたりの「再読」派もかなり多いのではないだろうか。私自身にも言えることだが、若い頃読んだこの手の古典は難解だった。 悩み多きこの時代に改めて読み直しておきたいという欲求は、相当あるはずだと思うのだが… この難しい状況の中で生きていくため、まざまな模索がある。 「蟹工船」「こころ」「罪と罰」…温故知新。 「悩む力」が求められている。(2008年)新聞に読者は戻ってくるのか■ 岡野祐三 企画はもちろん、表現にも力を注ぎ、「GLOBE」はADに木村裕治氏を起用して、朝日新聞としても力が入っているのが分かる。 「ここち」は24ページもあって、写真・イラストなど贅沢に使って、ほとんど雑誌のような体裁だ。両方ともデザインという観点でも申し分ない。 ここまでして、では「新聞に読者は戻ってくるのか」ということを考えると、はなはだ心許ない感じを持つのは、私だけではないだろう。 私がこの2つを取り上げたのは、そちらへの意味からだった。 Webと携帯電話がここまで普及した中で、「新聞くらい読めよ」「少しは本を読めよ」と言ってはばからない私たち世代でさえ、新聞に中身に目を通すのは週末くらい、ウイークディは目次だけ読んで慌てて出社し、帰宅してからはテレビで…といったライフスタイルになってしまっている実情がある。 そういえば日経新聞のように仕事に直結したものを除いて、電車内で新聞を読む姿は、最近めっきり見なくなった。 そうした社会状況下でも、企画が良ければ、「文庫本のカバーが熱い」のカバー文庫本のカバーが熱い読者の求めているニーズに的確に答えていけば「新聞に読者は戻ってくる」のか。 さらにグラフィックデザインの末端に関わる者として、デザインの力でどれだけ「新聞に読者が戻ってくる」のか…下に取り上げた「カラマーゾフの兄弟」の文庫本のようなことが起こるのか… 正直、諦めというか無力感が支配的ながらこうした試みをしばらく注視していたいと思っている。

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